深刻な経営課題のひとつである人手不足ですが、費用の問題から解消できずに悩んでいる事業主も多いのではないでしょうか。
そんな事業主が中途採用者の採用活動に活用できる支援制度に、中途採用等支援助成金があります。
この記事では、中途採用等支援助成金の概要と、メリット・デメリット、受給要件や必要書類などについて解説します。
中途採用等支援助成金とは?わかりやすく解説
対象者 | ■中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):
中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用の拡大を図る事業主 ■中途採用拡大コース(生産性向上助成): 中途採用拡大助成の支給を受けた事業主のうち、一定期間経過後に生産性が向上した事業主 ■UIJターンコース: 東京圏からの移住者を雇い入れた事業主 ■生涯現役起業支援コース: これから起業する人、事業を開始して間もない法人事業主、個人事業主 |
---|---|
利用目的 | ■中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用 の拡大を図った事業主に対して助成するものであり、中途採用の拡大を通じた生産性の向上に取り組む事業主への支援を目的としています。 ■中途採用拡大コース(生産性向上助成): 中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)は、中途採用者の雇用管理制度を整備した上で中途採用 の拡大を図った事業主に対して助成するものであり、中途採用の拡大を通じた生産性の向上に取り組む事業主への支援を目的としています。 ■UIJターンコース: 東京から地方への移住者の雇用機会の拡充と雇用の安定を目的としています。 ■生涯現役起業支援コース:生涯現役として働き続けられる社会の実現を目的としています。 |
対象経費 | ■中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):目標達成助成のためなし
■中途採用拡大コース(生産性向上助成):目標達成助成のためなし ■UIJターンコース: ・就職説明会等の実施に要した費用のうち採用担当者の交通費 (上限額:国家公務員の旅費に関する法律により算出される鉄道料金、船賃、航空費および車賃の合計額) ・就職説明会等の実施に要した費用のうち採用担当者の宿泊費 (上限額:1人1泊8,700円) ■生涯現役起業支援コース: 起業日の年齢が40歳以上の方が、「雇用創出措置に係る計画書」を提出し、 事業運営のために労働者を新たに雇い入れた場合、その募集・採用や 教育訓練の実施(「雇用創出措置」)に要した費用の一部 |
給付額 | ■中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):
A 中 途 採 用 率 の 拡 大 ※1 20ポイント以上向上させた場合 50万円 40ポイント以上向上させた場合 70万円 うちこれまで中途採用を行ったことがない場合 上記に加えて10万円 B 45歳以上の方の初採用 60万円または70万円 (60歳以上の方を初採用した場合に70万円を支給) C 情報公表+中途採用者数の拡大 ※2 30万円(対象者が1年定着した場合は更に20万円) ■中途採用拡大コース(生産性向上助成): A 中途採用率の拡大 1事業所あたり25万円 B 45 歳以上の方の初採用 1事業所あたり30万円 C 情報公表+中途採用者数の拡大 1事業所あたり15万円 ■UIJターンコース: 中小企業:助成率1/2、上限100万円 中小企業以外:助成率1/3、上限100万円 ■生涯現役起業支援コース: 1.雇用創出措置助成分 ・起業者が高年齢者(60歳以上)の場合 助成率2/3、上限200万円 ・起業者が上記以外の者(40歳〜59歳)の者の場合 助成率1/2、上限150万円 2.生産性向上助成分 「1.雇用創出措置助成分」により支給された助成額の1/4の額を別途支給 |
申請期間 | ■中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):
【A 中途採用率の拡大】の支給申請期限 中途採用計画期間の終了日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内 【B 45 歳以上の方の初採用】の支給申請期限 支給対象者の雇入れ日(※)から起算して6か月経過する日の翌日から2か月以内 (※)支給対象者が複数名の場合は、雇入れ日が最も早い方の雇入れ日を基準にします。 【C 情報公表+中途採用者数の拡大】の支給申請期限 ア 中途採用者数拡大助成 支給対象者の雇入れ日(※1)から起算して6か月経過する日 (※2)の翌日から2か 月以内 (※1)支給対象者が複数名の場合は、雇入れ日が最も遅い方の雇入れ日を基準にします。 (※2)当該日が計画期間末日以前の場合は、計画期間の末日 イ 定着助成 アの支給申請の期間の6か月後の期間 ■中途採用拡大コース(生産性向上助成): 基準年度の3年度後の会計年度末日の翌日から起算して5か月以内 ■UIJターンコース: 計画期間の終期から2か月以内 ■生涯現役起業支援コース: 計画期間終了日の翌日から起算して2か月以内 |
「中途採用等支援助成金」は、中途採用に積極的に取り組む事業主を支援する制度です。
中途採用者の雇用管理制度を整備することで中途採用の拡大を目指す中途採用拡大コースや、東京圏からの移住者を採用することで助成されるUIJターンコース、これから起業、または事業を開始して間もない人を支援する生涯現役起業支援コースなどがあります。
メリット
中途採用等支援助成金は、要件を満たしていれば誰でも受給することができ、融資とは異なり返済不要の資金を調達できる点が大きなメリットです。
要件を満たすには雇用管理制度の整備が必要となるため、その過程で適正な労務管理や労働環境の改善なども図れます。
デメリット
申請書類の作成や必要書類の準備などの煩雑な事務作業や、中途採用に関する取り組みなどに時間と労力がかかり、本業に支障が出る可能性がある点がデメリットです。
また、申請したものの対象の従業員が退職してしまったり、取り組みができなかったりした場合には受給できない可能性があるため注意が必要です。
中途採用等支援助成金の4つのコース
コース名 | 内容 | |
中途採用拡大コース(中途採用拡大助成) | 中途採用者の雇用管理制度を整備した上で、中途採用の拡大を測った事業主に対する助成制度です。 | |
中途採用拡大コース(生産性向上助成) | 中途採用拡大コースを受給した事業主で、一定期間経過した後に生産性の向上が認められた場合、追加で助成する制度です。 | |
UIJターンコース | 東京圏からの移住者に向けて採用活動を行い、対象者を雇い入れた事業主に対して、採用活動に要した費用の一部を助成する制度です。 | |
生涯現役起業支援コース | 40歳以上の中高年齢者が起業によって自らの就業機会を持つと共に、中高年齢者等の雇入れを行う際にかかる費用の一部を助成する制度です。 |
中途採用拡大コース(中途採用拡大助成)
受給要件
中途採用者に関する雇用管理制度を整備して、中途採用率を拡大させる。45歳以上の労働者を初めて採用する。中途採用についての情報を公表し、中途採用者数の拡大を図る。
これらの内いずれか1つを満たすことが受給要件です。
受給額
■中途採用拡大コース(中途採用拡大助成):
A 中 途 採 用 率 の 拡 大
※1 20ポイント以上向上させた場合 50万円
40ポイント以上向上させた場合 70万円
うちこれまで中途採用を行ったことがない場合 上記に加えて10万円
B 45歳以上の方の初採用 60万円または70万円
(60歳以上の方を初採用した場合に70万円を支給)
C 情報公表+中途採用者数の拡大
※2 30万円(対象者が1年定着した場合は更に20万円)
申請方法・必要書類
中途採用計画を作成し、労働局に提出。中途採用者の雇用管理制度を整備し、対象者を雇い入れます。
中途採用計画の他は、中途採用者の雇用管理制度の内容が確認できる書類が必要となり、情報公表を実施する場合は、情報を公表している自社ホームページの写しやパンフレットなどが必要となります。
中途採用拡大コース(生産性向上助成)
受給要件
中途採用拡大助成の支給を受けた後に、中途採用計画の実施期間初日を含む会計年度の前年度と、その3年度後の生産性を比較した時に、後者の生産性が6%以上向上していることが受給要件です。
受給額
■中途採用拡大コース(生産性向上助成):
A 中途採用率の拡大 1事業所あたり25万円
B 45 歳以上の方の初採用 1事業所あたり30万円
C 情報公表+中途採用者数の拡大 1事業所あたり15万円
申請方法・必要書類
生産性向上助成の支給申請書を作成し、労働局に提出します。支給申請書の他、支給対象者雇用状況等申立書、支給要件確認申立書、生産性要件算定シート、支給決定通知書の写し、支給対象者の賃金台帳等、中途採用者に関する雇用管理制度が確認できる書類が必要となります。
UIJターンコース
受給要件
中途採用者の採用活動に関する計画書を事業所の所在地を管轄する労働局に提出した上、計画書にて定めた計画期間内にを採用活動を行い、東京圏からの移住者で、地方公共団体が開設・運営するマッチングサイトに掲載された求人を活用すること。
雇入れ時より雇用保険に加入させること、継続雇用することが受給要件となります。
受給額
■UIJターンコース:
中小企業:助成率1/2、上限100万円
中小企業以外:助成率1/3、上限100万円
申請方法・必要書類
採用計画書を作成し、労働局へ提出。提出日の翌日から3か月以内に計画を開始、採用活動と対象となる労働者の雇入れを行い、計画期間終了時から2か月以内に支給申請書、助成額算定書、対象労働者雇用状況等申立書を提出します。
生涯現役起業支援コース
受給要件
起業日から11か月以内に、雇用創出措置に係る計画書を労働局に提出し、事業継続性の確認事項4つの内2つを満たすこと。計画期間内に対象労働者を必要数新たに雇い入れること。計画期間内に雇い入れた対象労働者が離職していないこと、また起業日から支給申請日までの間の離職者数が計画期間内に雇い入れた対象労働者の数を超えていないことが要件となります。
受給額
■生涯現役起業支援コース:
1.雇用創出措置助成分
・起業者が高年齢者(60歳以上)の場合 助成率2/3、上限200万円
・起業者が上記以外の者(40歳〜59歳)の者の場合 助成率1/2、上限150万円
2.生産性向上助成分
「1.雇用創出措置助成分」により支給された助成額の1/4の額を別途支給
申請方法・必要書類
事業を開始してから11か月以内に雇用創出措置に係る計画書を作成し、労働局に提出。12か月以内の計画期間に対象労働者の採用活動を行い、契約期間終了日の翌日から2か月以内に雇用創出措置に係る支給申請書を提出します。
この他、企業を確認できる書類、事業計画書など事業内容を確認できる書類、起業者の情報が確認できる書類、事業継続性が確認できる書類などが必要となります。
中途採用等支援助成金の受給・申請は難しい?
中途採用等支援助成金は、計画策定から申請書類の作成、必要書類の準備など手間はかかりますが、要件を満たしていれば誰でも受給できるため、比較的受給・申請の難易度は低いと言えます。