多くの中小企業や小規模事業者等にとって、生産性の向上は事業拡大を図る上で大きな課題ですが、各々の経営課題やニーズは異なり、ひとえに生産性向上の取り組みといっても設備投資やIT化、人材育成などその手段はさまざまです。
今回は、生産性向上やIT化などに幅広く活用できる補助金・助成金を6つと、補助金・助成金の違いなどについて解説します。
生産性向上・IT化のために活用できる補助金・助成金とは
ITツールの導入や雇用管理制度の整備にはいずれも多額の費用が必要になることが多く、資金の問題で取り組めずにいる方も多いですよね。
原則返済の必要がなく受け取れる補助金や助成金は、生産性向上の取り組みやIT化を進めるにあたって大きな助けとなります。
補助金・助成金を活用することで、大胆な取り組みも可能になりますので、自社の課題やニーズと照らし合わせながら活用を検討してみてはいかがでしょうか。
生産性向上・IT化のために利用できる補助金一覧
生産性向上やIT化に活用できる補助金・助成金には、様々な制度が設けられています。
今回は、生産性向上やIT化を進める際の資金繰りに悩む中小企業・小規模事業者等の経営者が活用しやすい補助金・助成金制度を一覧にしてまとめました。
設備投資や雇用管理制度の整備などを行う際に、自社にはどの制度が適しているのか、参考にしてください。
IT導入補助金
「IT導入補助金」は、中小企業や小規模事業者、個人事業主がITツールを導入する際にかかる費用の一部を補助する制度です。
事業の生産性向上や売上アップをサポートするITツールを導入する際に活用できる通常枠と、会計ソフトや受発注ソフトなど企業間取引のデジタル化を推進する際に活用できるデジタル化基盤導入枠があります。
生産性向上やIT化を目標とした時に、まず検討したい代表的な補助金です。
対象者 | 中小企業・小規模事業者 |
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給付額 | 最大450万円 |
申請期間 | 2021年 1次締切分 2021年5月14日(金) 2次締切分 2021年7月30日(金) 3次締切分 2021年9月30日(木) 4次締切分 2021年11月17日(水) 5次締切分 2021年12月22日(水) |
中小企業の経営資源の集約化に資する税制
「中小企業の経営資源の集約化に資する税制」とは、生産性向上を目指して経営力向上計画を策定し、主務大臣に申請、認定を受けた中小企業者が、株式を購入した際の取得額のうち、最大70%を損金算入できる税制措置です。
設備投資減税、雇用確保を促す税制、準備金の積立を認める措置(リスクの軽減)があります。
ウィズコロナ社会に対応すべく新規事業拡大や多角化を図る中小企業の支援を目的としています。
対象者 | 経営資源の集約化(M&A)によって生産性向上等を目指す、経営力向上計画の認定を受けた中小企業 |
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給付額 | 経営力向上計画に基づいてM&Aを実施した場合、以下の税制措置を活用可能
【設備投資減税】 経営力向上計画に基づき、以下いずれかの要件に 該当する一定の設備を取得等した場合、投資額の10%を税額控除 又は 全額即時償却。 (※資本金3000万円超の中小企業者等の税額控除率は7%) 【準備金の積立】 事業承継等事前調査に関する事項を記載した経営力向上計画の認定を受けた上で、計画に沿ってM&Aを実施し た際に、M&A実施後に発生し得るリスク(簿外債務等)に備えるため、投資額の70%以下の金額を、準備金として積み立て可能(積み立てた金額は損金算入)。 |
申請期間 | 【設備投資税】
青色申告書を提出する中小企業者等が、令和5年3月31日までの期間に、認定を受けた経営力向上計画に基づき一定の設備を新規取得等して指定事業の用に供した場合、即時償却又は取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択適用することができます。 【準備金の積立】 中小企業者のうち、令和6年3月31日までに事業承継等事前調査(実施する予定のDD※ の内容)に関する事項が記載された経営力向上計画の認定を受けたものが、株式取得によってM&Aを実施する場合に(取得価額10億円以下に限る)株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の一定割合の金額を準備金として積み立てた時は、その事業年度において損金算入できる制度です。 |
中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース・生産性向上助成分)
「中途採用等支援助成金」の生涯現役企業支援コースは、起業した日の年齢が40歳以上の人が、「雇用創出措置に係る計画書」を作成・提出し、新たに労働者を雇い入れた場合に、募集や採用、教育訓練などに要した費用の一部を助成する制度です。
生産性向上助成分は、計画書提出年度とその3年後の生産性を比較して伸び率が6%以上だった場合に、別途支給される助成金です。
対象者 | 事業を開始して間もない法人事業主または個人事業主 | |||||||||
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給付額 | 1.雇用創出措置助成分
起業時 の年齢区分に応じて、計画期間内に生じた雇用創出措置に要した費用(※)の合計に、以下の助成率を乗じた額を支給します。 ※費用ごとに上限額がありますのでご留意ください。
2.生産性向上助成分 「1.雇用創出措置助成分」により支給された助成額の1/4の額を別途支給します。 ※例:雇用創出措置助成分として100万円の助成金が支給されている場合には、その1/4の25万円が別途支給されます。 |
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申請期間 | 雇用創出措置に係る計画書の作成・提出:起業日から11か月以内に提出
↓ 計画期間:12か月以内 ↓ 雇用創出措置に係る支給申請書の提出:計画期間終了日の翌日から起算して2か月以内に提出 ↓ 生産性向上に係る支給申請書の提出;計画書が提出された会計年度の3年度後の会計年度が終了した日の翌日から起算して5か月以内に提出 |
業務改善助成金(中小企業・小規模事業者の生産性向上のための取組を支援)
「業務改善助成金」は、事業場内で最も低い賃金の引上げを図る中小企業事業主、小規模事業者を支援する制度です。
生産性向上を目的とした設備投資や人材育成などを行った際の費用の一部が助成の対象となります。
「ITツールを導入して業務を自動化させる」など、生産性を向上させることで従業員の時間給の引き上げを実施するなどして活用します。
対象者 | 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内
事業場の中小企業・小規模事業者の事業場規模が100人以下 |
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給付額 | 【事業場内最低賃金900円未満】 補助率4/5 生産性要件を満たした場合は 補助率9/10 【事業場内最低賃金900円未満】 |
申請期間 | 令和5年3月31日 |
人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)
「人材確保等支援助成金」の人事評価改善等助成コースは、人事評価制度や賃金制度を整備することで、生産性向上や賃金アップを図り、離職率の低下に努める事業主に対して助成する制度です。
人材不足を解消し、雇用の安定化を目的としています。
令和4年4月1日より整備計画の受付は休止されており、現在は令和4年3月31日までに計画を提出した場合のみ手続きが可能となっています。
対象者 | (1)雇用保険の適用事業主であること
(2)認定された人事評価制度等整備計画に基づき、人事評価制度等の整備・実施を新たに行い、人事評価制度等対象労働者の「毎月決まって支払われる賃金」について、以下の要件を満たすこと。 a 新制度等の「実施日の属する月の前月」と「実施日の属する月」の「毎月決まって支払われ る賃金」の対象労働者の合計額を比較したときに、2%以上増加させており、かつ、2%以上 増加した「毎月決まって支払われる賃金」の対象労働者の合計額を「実施日の属する月」の1 年後の同月においても引き下げないこと。 b 新制度等の「実施日の属する月の前月」における24歳から59歳までの各年齢の「毎月決まっ て支払われる賃金」のモデル賃金額に当該年齢の在籍者の数を乗じて求めた合計額に比べて、 「実施日の属する月」における各年齢のモデル賃金額に当該年齢の在籍者の数を乗じて求めた 合計額を2%以上増加させており、かつ、2%以上増加した合計額を、「実施日の属する月」 の1年後の同月においても引き下げないこと(各年齢のモデル賃金額が2%増加していること が望ましい。) (3)過去に次の助成金を受給している場合、次の条件を満たすこと (ⅰ)『本助成金 (制度整備助成及び目標達成助成)及び人事評価改善等助成金(制度整備 助成及び目標達成助成)』を受給している場合 再度人事評価制度等整備計画を提出する場合は、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が 経過している事業主であること。 (ⅱ)『本助成金(雇用管理制度助成コース/目標達成助成)』、『職場定着支援助成金 (雇用管理制度助成コース/制度導入助成)』において、評価・処遇制度の雇用管理制 度区分を含む内容で受給している場合(平成29年3月31日までに職場定着支援助成金の計画認定申請をし ていた場合を除きます。) 人事評価制度等整備計画を提出する場合は、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過して いる事業主であること。 (ⅲ)『本助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース/制度整備助成)』、『職場 定着支援助成金(保育労働者雇用管理制度助成コース・介護労働者雇用管理制度助成 コース)/制度整備助成)』を受給している場合(平成29年3月31日までに職場定着支援助成金の 計画認定申請をしていた場合を除きます。) 人事評価制度等整備計画を提出する場合は、最後の支給決定日の翌日から起算して3年間が経過し ている事業主であること。 (4)引き続き、整備した人事評価制度等を実施していること a 新制度等の「実施日の属する月の前月」と「「実施日の属する月」の1年後の同月」の「毎月決 まって支払われる賃金」の対象労働者の合計額を比較したときに、2%以上増加していること。 b 新制度等の「実施日の属する月の前月」における24歳から59歳までの各年齢の「毎月決まって支 払われる賃金」のモデル賃金額に当該年齢の在籍者の数を乗じて求めた合計額に比べて、「「実 施日の属する月」の1年後の同月」の「毎月決まって支払われる賃金」における各年齢のモデル 賃金額に当該年齢の在籍者の数を乗じて求めた合計額が2%以上増加していること。 (5)「生産性要件」を達成すること (6)離職率の低下目標を達成すること (7)社会保険の適用事業所であること(社会保険の要件を満たす場合)また、対象事業所に雇用される労働者が社会保険の被保険者であること(社会保険の要件を満たす者に限る。) (8)人事評価制度等の整備日の前日から起算して6か月前から評価時離職率算定期間末日までの期間について、雇用する雇用保険被保険(「雇用保険法第38条第1項に規定する「短期雇用特例被保険者」及び同法第43条第1項に規定する「日雇労働被保険者」を除く。」)を事業主都合で解雇等していないこと(同一事業主の全ての適用事業所が対象)。 |
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給付額 | 目標達成助成:80万円 |
申請期間 | 【提出期間】評価時離職率算定期間の末日の翌日から起算して2か月以内 |
中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
「中途採用等支援助成金」の中途採用拡大コースは、中途採用者の雇用管理制度などを整備して、中途採用に積極的に取り組む事業主に対して助成する制度です。
中途採用拡大助成金を受給し、一定期間が経過したのちに生産性向上が認められた場合、追加で生産性向上女性が支給されます。
資金の問題で採用活動を行えず、人手不足に悩む事業主にとって大きな力となる助成金です。
対象者 | 次の(1)~(5)のいずれにも該当する方
(1)申請事業主に、中途採用により雇い入れられた方 (2)雇用保険の一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れられた方 (3)期間の定めのない労働者(パートタイム労働者を除きます)として雇い入れられた方 (4)雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、雇用関係、出向、派遣又は請負により申請事業主の事業所において就労したことがない方 (5)雇入れ日の前日から起算してその日以前1年間において、申請事業主との関係が資本的・経済的・組織的関連性等からみて独立性を認められない事業主に雇用されていた方でないこと |
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給付額 | ・中途採用率の拡大 50〜70万円 (うちこれまで中途採用を行ったことがない場合、上記に加えて10万円) ・45歳以上の方の初採用 ・情報公表・中途採用者数の拡大 (※)支給申請日において継続して雇用されている支給対象者の中に、雇入れ時の年齢が60歳以上であって、かつ雇入れ日から6か月以上経過している方がいる場合に、70万円を支給します。 |
申請期間 | ・【中途採用率の拡大】の支給申請期限 中途採用計画期間の終了日から起算して6か月を経過する日の翌日から2か月以内 ・【45歳以上の方の初採用】の支給申請期限 (※)支給対象者が複数名の場合は、雇入れ日が最も早い方の雇入れ日を基準にします。 ・【情報公表+中途採用者数の拡大】の支給申請期限
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補助金と助成金の違い
事業の生産性向上やIT化を進めるには費用が必要となりますが、補助金・助成金をうまく活用することで、資金繰りの負担を軽減させることができます。
ここでは、補助金と助成金の違いやメリット・デメリットについて詳しく解説いたします。
補助金とは
補助金とは、政府や民間の財団などから一定の要件を満たした企業や事業主に対して支出される資金のことです。
融資とは異なり原則返済の必要がありません。
採択された場合には、数百万円から数千万円単位で資金補助が行われることが多く、生産性向上やIT化を進める際に大きな力になります。
メリット・デメリット
補助金を活用するメリットは、採択された場合に大きな費用補助(数百万円〜数千万円)を受けられることです。
デメリットは、申請を行なっても必ずしも採択されるとは限らず、公募期間も比較的短い制度が多いため、必要な時に必要な補助を受けられないことがある点に注意が必要です。
補助金の申請方法
補助金は、自社で申請を行うことも可能ですが、採択率を上げるためには、完成度の高い事業計画を作成する必要があります。
中小企業診断士や行政書士など、経営や行政手続きの専門家によるサポートを受けながら申請を行うことが、採択率の向上に繋がります。
助成金とは
助成金とは、一定の受給要件を満たした個人や企業に対して支出される資金です。
補助金と同様に返済義務はありません。要件を満たして申請を行えば、基本的に審査を通過する必要なく費用助成を受けられる点が補助金との違いです。
メリット・デメリット
助成金を活用するメリットとして、一定の要件を満たした申請を行えば、原則として費用助成を受けられるということが挙げられます。
デメリットは、補助金と比較した際に採択時に受けられる金額が低額な場合が多く、後払いであるため一時的に費用を立て替える必要があることです。
助成金の申請方法
助成金も自社で申請書と計画書を作成して申請することが可能です。
自社での申請書類作成が困難な場合には、助成金業務に特化した社会保険労務士に代理申請を依頼することもできます。
専門家のアドバイスを受けることで、より多くの資金調達を行える可能性が高まります。
生産性向上・IT化に関する補助金・助成金を有効活用しよう!
今回は、生産性向上やIT化に活用できる補助金・助成金制度6つと、補助金・助成金の違いなどについて解説しました。
設備投資や人材育成など、多くの費用が必要となる生産性向上の取り組みにおいては、補助金・助成金の活用が欠かせません。
これまで資金の問題で取り組めずにいた事業者は、この記事を参考に、自社に適した制度を見つけ、活用を検討してみてくださいね。