「キャリアアップ助成金」は、非正規労働者等の雇用の安定や賃上げ等の取り組みを行う事業主に対して助成金を支給する制度で、“働き方改革”に取り組む多くの企業から注目を集めています。
今回は、「キャリアアップ助成金」から代表的な制度のひとつである“正社員化コース”を事例として、申請手続きに必要な書類について解説いたします。
キャリアアップ助成金とは?
「キャリアアップ助成金」は、パートタイム従業員や派遣社員等のいわゆる“非正規労働者”の正社員転換や直接雇用、同一労働同一賃金等の処遇改善に取り組む事業主に対して、助成金を支給することを目的とした制度です。
本制度を活用することで、魅力ある職場環境づくりや優秀な人材の確保、働き方改革の推進に繋げることができます。
キャリアアップ助成金申請の必要書類一覧
1.キャリアアップ助成金支給申請書
「キャリアアップ助成金支給申請書」では、支給申請を行うコース(正社員化コースや賃金規定等改定コース等)、生産性要件に係る支給申請であるか等について記載します。
2.正社員化コース内訳
「正社員化コース内訳」では、正社員転換や直接雇用を行う対象労働者の氏名、年齢、雇用年月日、勤務地限定正社員や職務限定正社員などの措置を取る場合にはその旨等について記載します。
3.正社員化コース対象労働者詳細
「正社員化コース対象労働者詳細」では、正社員転換や直接雇用を行う対象労働者について、転換または直接雇用をした後に6か月分の賃金を支給した日、その者が派遣労働者であるか、役員の就任経験の有無等の詳細について記載します。
4.支給要件確認申立書
「支給要件確認申立書」では、雇用関係助成金の不正受給の経験の有無や労働保険料の滞納の有無、暴力団員ではないこと等、助成金の支給要件についての記載を行います。
5.支払方法・受取人住所届
「支払方法・受取人住所届」では、自社の金融機関口座や住所等について記載します。
以前に同書類の届出を行ったことがある場合には、再度の提出を行う必要はありません。
6.キャリアアップ計画書(写)
「キャリアアップ計画書(写)」では、正社員化コース等のキャリアアップ計画の実施予定や対象労働者、目標等について記載をします。
本書類は、管轄労働局の認定を受ける必要があります。
7.①労働協約(写)または②就業規則(写)または③その他、①、②に準ずるもの(写)
「①労働協約(写)または②就業規則(写)または③その他、①、②に準ずるもの(写)」では、正社員への転換や直接雇用制度についての記載や従業員への周知が行われている必要があります。
8.就業規則(写)または労働協約等(写)
「就業規則(写)または労働協約等(写)」では、正社員への転換後や直接雇用後に、対象労働者が適用されている雇用区分について明記されている必要があります。
9.対象労働者の転換前後の雇用契約書または直接雇用後の労働条件通知書または雇用契約書(写)
「対象労働者の転換前後の雇用契約書または直接雇用後の労働条件通知書または雇用契約書(写)」では、対象労働者の転換前後又は直接雇用後の契約内容、労働条件について記載されている必要があります。
10.対象労働者の賃金台帳
「対象労働者の賃金台帳」では、正社員転換や直接雇用を行おうとする労働者について、転換前後または直接雇用後6か月間の賃金について記載します。
11.賃金3%増額に係る計算書
「賃金3%増額に係る計算書」では、事業主が任意で作成した計算書や、賃金上昇要件確認ツール(厚生労働省HPよりダウンロード)を用いて作成した計算書等、賃金総額が3%以上増額したことの計算根拠について記載します。
12.対象労働者の出勤簿またはタイムカード(写)
「対象労働者の出勤簿またはタイムカード(写)」では、対象労働者の転換前後または直接雇用後6か月分の出勤記録について記載されている必要があります。
13.中小企業事業主であることの確認書類
「中小企業事業主であることの確認書類」は、キャリアアップ助成金の受給申請をしようとする事業主が中小企業事業主である場合に提出を行います。
資本金の額により判断する場合は、会社概要パンフレットや登記事項証明書、常時使用する労働者の数により判断する場合は、事業所確認票の提出が必要となります。
14.その他
多様な正社員への転換または直接雇用の場合、人材開発支援助成金において高助成率とする一定のIT訓練等を経て正規雇用労働者へ転換した場合の加算の適用を受ける場合、勤務地限定正社員制度または職務限定正社員制度を新たに規定した場合の加算の適用を受ける場合等、助成金の加算適用の措置を受ける場合には、上記以外にも提出書類が必要となることがあります。
キャリアアップ助成金申請が採択されるのは難しい?
「キャリアアップ助成金」は、要件を満たして申請を行えば原則として採択されるため、費用助成を受ける為の難易度は比較的低いといわれています。
ただし、“キャリアアップ計画表”の作成や各種取り組みの実施には煩雑な手続きが伴い、意図せずして不正受給を行なってしまった事業主も存在します。
自社での申請が困難な場合には、助成金業務の専門家である社会保険労務士に相談することをオススメいたします。