「キャリアアップ助成金」は、派遣労働者やパートタイマーなどの“非正規労働者”等の処遇改善を行う際に活用することができる制度です。
組織力の強化や優秀な人材の確保を図る多くの企業により活用される人気の助成金制度ですが、申請までに具体的にどの様なステップを踏めばよいか分からないという事業主の方も少なくありません。
今回は、「キャリアアップ助成金」の代表制度である“正社員化コース”を事例に、申請の流れについて解説いたします。
キャリアアップ助成金の申請の流れ
①キャリアアップ計画書の作成と管轄労働局への提出
まずは、事業所ごとにキャリアアップ管理者の 配置と、キャリアアップ計画書の作成を行います。
キャリアアップ計画書では、3年以上5年以内の期間を定め、いつ正社員転換や直接雇用を行うか等の目標を設定します。
キャリアアップ計画書は、正社員転換・直接雇用を行うまでに管轄労働局へ提出し、労働局長の認定を受ける必要があります。
②正社員等への転換制度を規定した就業規則の制定と管轄労働局への届出
正社員転換や直接雇用制度を規定した就業規則を制定し、管轄労働局へ提出します。
就業規則は、労働者代表の意見を聴いた上で制定し、正社員転換等を行うよりも前に施行する必要があります。
③労働者を正社員転換・直接雇用する
就業規則に則り労働者に対して面接や試験を実施し、合格者を正社員転換・直接雇用します。
就業規則に規定された労働条件・待遇により雇用契約の締結を行う必要がある他、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間の賃金と比較して3%以上増額しなければなりません。
④労働者を正社員転換・直接雇用した後6か月雇用を継続し、管轄労働局へ支給申請を行う
労働者を正社員転換・直接雇用した後6か月間雇用を継続し、6か月分の賃金を支給した翌日から起算して2か月以内に管轄労働局へ助成金の支給申請を行います。
時間外手当を基本給とは別の時期に支給している場合には、6か月分の時間外手当が支給される日が起算日となります。
⑤審査・助成金支給決定
就業規則、出勤簿、賃金台帳等の提出書類を元に労働法令違反の有無の審査が行われます。
書類不備や不明瞭な点があれば追加での資料提出を求められることがある他、審査から助成金の支給決定までに半年以上かかるケースも珍しくありません。
計画的な取り組みを実施し、申請手続きにかかる負担を少しでも減らしたいという方は、社会保険労務士へ相談を行うことをオススメいたします。
キャリアアップ助成金申請時の注意点
「キャリアアップ助成金」は“非正規労働者”の正社員転換や賃上げ等の取り組みを実施した上申請を行えば、原則として費用助成を受けることができます。
しかし、助成金受給までに数か月から数年単位での期間が必要になるケースも多く、その間に従業員の解雇などを行った場合には、助成金を受け取ることができないこともあります。
助成金の受給要件をしっかりと理解し、計画的に取り組みを行うことが重要です。
まとめ
今回は、「キャリアアップ助成金」の申請の流れについて解説しました。
助成金を受給するためには、キャリアアップ計画の策定から取り組みの実施、申請書類の作成など様々な工程をクリアする必要があります。
意図しない助成金の不正受給を防ぎ、より確実に助成金を受給するためにも、社会保険労務士によるサポートの元計画的な申請を行うことをご検討ください。