会社の3大資源「ヒト・モノ・カネ」のひとつであるお金は、事業の拡大や継続に欠かすことができません。
企業の資金繰りをサポートするため、国や自治体などが交付する補助金・助成金は、原則返済の必要がなく、事業の拡大や継続において大きな助けとなります。
この記事では、補助金と助成金の違いに加え、給付金についても解説します。
補助金と助成金の違いとは?
事業の強い味方である補助金と助成金に関心はあっても、違いについてはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
補助金と助成金を簡潔に説明すると、公的機関から事業に必要なお金をもらえる制度です。さらに、原則返済の必要がないという点はどちらも同じです。
その上で、補助金と助成金の異なる点は、目的、仕組み、対象者、申請方法にあります。
ここではそれぞれの相違点について、詳しく解説します。
補助金とは?
補助金とは、一定の要件を満たした企業や個人事業主の取り組みをサポートするために、国や自治体などから給付されるお金のことです。
それぞれの補助金事業が掲げる政策目標に合わせてさまざまな分野の補助金制度があり、生産性向上の取り組みや職場環境の改善など、さまざまな用途に活用できます。
原則として返済義務はなく、人材育成以外にも生産性向上のための設備投資など、さまざまな用途に活用することができます。
採択された場合には数百万円から数千万円単位で資金補助が行われることが多く、事業継続と拡大に欠かせない制度です。
目的
補助金は国や地方自治体などの公的機関や、一部民間団体から交付されています。補助金を交付する目的は、それぞれの補助金事業が掲げる政策目標を達成させることにあります。
例えば、環境問題の改善を政策目標と掲げている場合、企業に対して二酸化炭素排出量削減のための設備導入費を補助する、などのように活用します。
企業の取り組みを資金面でサポートすることで、国や地域の経済活動が活発になり、企業の事業拡大もかなうなど、双方に大きなメリットがあります。
補助金の仕組み
補助金は国や地方公共団体などから交付され、資金源は税金です。
そのため申請すればすべての事業者が受給できるわけではなく、事業計画や申請書を提出し、審査を受けて通過した場合にのみ支給されます。
また、補助金には予算が明確に定められているため、公募期間が短かったり、応募者が多数だった場合先着順となるなど、少々ハードルが高い傾向にあります。
対象者
補助金の対象者は、その制度により異なります。
多くは中小企業や小規模事業者、個人事業主などが対象となり、業種や組織形態、資本金や従業員の数などにより、要件に差が生じます。
補助金により政策目標が異なるため、自社の事業内容と合致した制度を選択しなければ、審査を通過するのは難しいため、募集要項を入念に確認し計画を策定する必要があります。
申請方法
補助金を申請する方法や用意するものは制度によって異なるため、公募要領を確認しましょう。特に補助金は募集期間や受付数に限りがあるため注意してください。
ただし、どの制度でも採択されるために共通する必要なものは、事業計画の策定と申請書類の内容の充実です。
提出は、郵送での書類送付または電子申請のいずれかが多く見られます。
補助金の種類
補助金事業は種類が多く、さまざまな政策目標が掲げられているため、その活用用途も幅広いです。
代表的なものには、生産性向上のための設備導入費や新製品・新サービスの開発費などを支援する「ものづくり補助金」や、従業員数が20人以下の小規模な事業者の事業拡大を支援する「小規模事業者持続化補助金」などがあります。
現在は新型コロナウイルス感染症対策の一環で、対人接触機会を減少させるツールの導入費を支援する制度なども存在します。
助成金とは?
助成金も、返済の義務がないお金という点で補助金と共通していますが、助成金は要件を満たした状態で申請すれば、受給できる可能性が非常に高いという点が異なります。
厚生労働省が管轄する雇用関係の制度か、経済産業省などによる研究開発向けの制度があり、補助金と比較すると活用できる範囲は限られています。
目的
助成金の主な目的は、労働者の職業安定を守ること、そして企業の技術力を向上させることです。
特に雇用関係のサポートが充実しており、非正規雇用労働者のキャリアアップや処遇改善にはじまり、労働時間短縮など働き方改革推進の取り組み、雇用機会の創出、人材育成、雇用維持などに活用できます。
企業の大きな課題である人手不足を解消すると共に、求職者を救済し、労働者の働きやすい環境が整備できるなど、雇用主と労働者双方も課題を解決する制度となっています。
助成金の仕組み
助成金は、主に厚生労働省や経済産業省などが事業支援を行います。
厚生労働省が交付する雇用関係の助成金であれば、雇用保険料から支出されるため、受給には雇用保険適用事業所の事業主であることが条件となります。
「労働環境の改善」や「人材育成」など、助成金ごとに目的が定められており、申請要件や審査基準はそれぞれ異なります。
対象者
助成金の対象者は制度により異なりますが、雇用関係の助成金を例に挙げると、雇用保険適用事業者の事業主であることが必須条件です。
申請すれば高確率で受給できる助成金ですが、申請内容が適切かどうか審査されます。提出書類やデータの適切な管理が求められます。
また、助成金によっては計画実施期間や申請期間に定めがあり、要件が複雑な制度もあるため、自社の事業計画に助成金が適用されるのか必ず事前確認を行いましょう。
申請方法
助成金の申請方法や必要書類も制度により異なりますが、申請書類の提出は各窓口に持参または郵送、電子書面のいずれかが用いられます。
申請書の提出後に助成対象期間が開始されます。その間の取り組みの結果に対して助成金が給付されるため、後に報告書の作成と提出が必要になります。
助成金の種類
助成金は、大きく分けて労働者の雇用の安定を図るものと、企業の研究開発に活用できるものがあります。
一般的な企業で活用しやすい雇用関係の助成金には、労働者のキャリアアップを促進させる「キャリアアップ助成金」や、労働環境の改善に活用できる「人材確保等支援助成金」の他、就職困難な求職者の雇用機会を増やすことを目的とした制度や、新型コロナウイルス感染症の影響で人件費が逼迫している事業者を支援する制度などがあります。
給付金とは?
これまでに解説した補助金や助成金は事業主が対象の資金援助制度でしたが、給付金は事業主だけではなく個人が申請し、受給できるものが多くあります。
病気やケガ、災害などの影響で収入の獲得が難しい方や、新型コロナウイルス感染症の影響で休業を余儀なくされた方の生活資金を支援するなど、さまざまな給付金が交付されています。
目的
給付金は、国民が健康で文化的な最低限度の生活を営むために、不足している金銭を国が補助する目的があります。
例えば、病気や被災などのやむを得ない理由で収入が得られない場合に支給される生活維持資金や、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請で、休業を余儀なくされた事業所の人件費支援などに活用されます。
また、同ウイルスの影響で経済活動が滞った際には緊急経済対策として現金が給付されるなど、全国民を対象とするイレギュラーな給付金も存在します。
給付金の仕組み
給付金には基本的に国費が使用され、申請要件や申請方法、支給金額はそれぞれの給付金の目的により異なります。
事業者や労働者、あるいは国民の生活維持に必要な資金を支援することが目的であるため、要件を満たしていれば原則支給されます。
対象者
ひとえに給付金と言っても対象者はさまざまですが、労働者や事業主が活用できる制度に限れば、中小事業主に雇用される労働者が対象となるものが多くみられます。
雇用保険に加入していない学生アルバイトや、日本国内で働く労働者であれば国籍は問わないなどの条件もあるため、申請時には要項を必ず確認してください。
申請方法
給付金の申請には、支給申請書の提出が必要です。中小企業に雇用されている方向けの「休業支援金・給付金」を例とすると、提出方法は郵送申請とオンライン申請のいずれかが可能です。
給付金によっては、支給申請書のほかに支給要件確認書や、証拠が必要となる場合があるため、申請方法は給付金ごとの確認が必要です。
給付金の種類
現在事業主が活用できる給付金には、経済上の理由や、新型コロナウイルス感染症の影響で事業縮小を余儀なくされた事業主を支援する目的のものが多く見られます。
度々の自粛要請による営業時間の短縮や利用者の減少により、事業継続が困難である事業者の再起を支える「持続化給付金」や、休業中の労働者の賃金の一部や教育訓練費用を支援し雇用維持を図る「雇用調整助成金」などが、代表的な給付金です。
補助金と助成金の違い比較一覧
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
目的 | 政策目標の達成 | 労働者の職業安定と企業の技術力向上 |
仕組み | 申請すればすべての事業者が受給できるわけではなく、審査を受け採択される必要がある | 要件を満たして申請すれば受給できる可能性が非常に高い |
対象者 | 中小企業や小規模事業者、個人事業主など | 中小企業や小規模事業者、個人事業主など
厚生労働省が交付する雇用関係の助成金であれば、雇用保険適用事業所の事業主 |
申請方法 | 各窓口に持参または郵送、電子書面の提出 | 各窓口に持参または郵送、電子書面の提出 |
種類 | 小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金など | キャリアアップ助成金、人材確保等支援助成金など |